一指禅功点穴療法と中薬を併用した間質性肺炎治療例の検討
廖萃萃?廖赤陽?大村行広
間質性肺炎は、呼吸器科の難病で、日本では国家による研究調査と公費支給の対象である難治性疾患(「特定疾患」)の一つに指定され、現代医学ではいまのところ有効な治療法がない。しかし筆者はかつて、間質性肺炎の中医薬治療についての症例報告で初歩的な検討を行った。本疾患に対する気功治療に至っては、筆者は管見にしてその報告をいまだ知らない。それゆえ、本稿では浅学非才をも顧みず、具体的な臨床例の分析を通して、気功「外気」と中薬の運用による間質性肺炎治療の方法と機序を検討した。専門家の示教をお願いする次第である。なお、症例報告を採用したのは、中医学の生命はケーススタディにあり、多数例の統計にはないと固く信じるからである。
一、現代医学の本疾患に対する認識と治療
一般的な肺炎は、気管支あるいは肺胞内に発生した感染性の炎症を指す。しかし間質性肺炎は、肺の間質中に発生する病理変化で多くは原因不明(特発性間質性肺炎)であり、びまん性の肺胞の炎症と肺胞構造の乱れによって、最終的に肺の間質の線維化に至るのを特徴とする疾患である。
これには以下の二大特徴がある:
1)肺の間質の炎症が肺組織の肥厚を引き起こし、肺の膨張と収縮を妨げ、肺活量の低下を来たし、肺における空気交換の速度を減退させる。
2)間質組織の肥厚が毛細血管と肺胞組織の分離を引き起こし、それが酸素と二酸化炭素の交換、特に酸素の拡散に影響する。
本疾患は、痰を伴わない空咳と労作時呼吸困難を初発症状かつ主要症状とする。胸部X線検査では、両肺に輪状陰影が見られる。血液検査では、白血球数の増加、CRP陽性、LDH値上昇、動脈血の酸素飽和度低下などが見られる。経気管支肺生検(TBLB)による病理検査時に、肺胞萎縮?肺間質の線維化が表示される。
本疾患は、長年かけて次第に進行し、最終的には心肺機能の衰弱に至る。それゆえ本疾患は、予防できず早期発見が容易でなく、治療が難しく進行性に損害を与える「不治の病」である。
一般の患者はみな、胸部X線検査で間質性肺炎が発見された時には、すでにかなり進行しており、時々呼吸困難や空咳を自覚している。こののち、常に感冒や急性気道感染によって誘発され悪化して、かつ増悪する。重症時には肺性心を併発し、そして呼吸不全により死に至る。
日本での主な治療は、二つの方面からなされる。一つは、炎症の抑制で、主に副腎皮質ステロイドと免疫抑制剤を用いる。奏効することが甚だ少ないだけでなく、かえっていくつかのマイナスの影響をもたらし、かつ感染時に使用された薬物が病状を悪化させる。二つめは、呼吸困難に対して実施する対症療法としての酸素療法である。ただし患者は充分に二酸化炭素を排出できないので、単純な酸素吸入は高二酸化炭素血症を来たす可能性があり、このため人工呼吸器を導入せざるを得なくなる。これら以外に、患者のリハビリテーション治療には、栄養療法、酸素療法、運動、感染予防などが含まれる。しかし現代医学は、間質性肺炎に対して今に至るまで有効な治療法を見つけ出していない。本疾患を不治の病と見なしているので、患者は生涯服薬せざるを得ず、日増しに悪化する呼吸困難と刺激性の乾いた咳に耐え、死を待っている。リハビリテーション治療もわずかに慰め的な方法を提供するもので、少しばかりの患者の苦痛を軽減するのみである。
二、現代中医学の本疾患に対する認識と治療例
現代中医学では間質性肺炎は、伝統医学の「肺痿」あるいは「肺痹」に属し、その病理変化は肺に在り、肝?脾?腎の機能失調に関係するものと考えている。一般にその病理機序は主に肝腎両虚、瘀?痰?熱などの病邪の結合で、治療原則は肺腎の補益、痰の除去、しこりの消散なので、「活血通絡」(血行促進)、「軟堅散結」(堅いしこりを軟らげ消散)、「化痰清熱」(去痰し解熱)などの方法で治療する。これによって疾患の進行を遅くし、臨床症状を寛解して、患者の精神的ストレスを軽減させ、それにより生活の質(QOL)を向上させる。
筆者はかつて、中国福建省福州市の医院で同院中医科林於慧主任医師の指導で、1例の間質性肺炎患者を治療した。
患者:李某、男性、71歳。
主訴:空咳が1年間反復する。
入院期間:年7月29日~9月30日。
入院時診断:現代医学―間質性肺炎?頸椎症、中医学―虚熱型肺痹。
現病歴:入院1年前、はっきりとした誘因もなく空咳が反復するようになった。たまに咳に少量の白い泡沫様の痰が混じる。進行性に悪化する喘息を伴い、運動開始後に呼吸促迫が現れるようになり、その後アパートの4階に上ると喘息が起こる。寒がって発熱することはなく、たまにめまいと胸内苦悶があり、夜間の発熱寝汗はない。口が乾き、咽が痒く、粘った痰がある。食欲はまだあるが、睡眠時に喘鳴があり、たまに便秘し、小便は色が水のように澄んで量が多い。以前、医院、医院で現代医学の治療を受けた。そこの入院時の診断は間質性肺炎?頸椎症?高血圧で、抗感染症剤、喘息治療薬や対症治療薬などを服用したが効果がないので、中医治療を希望し当院に転院した。
治療:「滋陰潤肺」(陰を補益し肺を滋養)、「活血通痹」(血を活発化し滞りを通じる)の治療を主とし、黄耆?刺五加注射液の静脈点滴で「宣肺補気」(去痰し肺の気を補う)して免疫力を増強する。丹参注射液で「活血通痹」(既出)し、複方アミノ酸で栄養する。別に中薬処方として、黄耆?防風?白朮?玉竹?麦門冬?前胡?白前?百合?杏仁?魚醒草?荊芥?当帰?丹参?乳香?没薬?黄精?桑椹などを随症加減して、「宣肺定喘」(肺気を通じて鎮咳)、「潤肺化痰」(肺を滋養し去痰)、「培土生金」(脾を正常化し肺を補益)、「補腎陰」(腎の陰虚を補益)、「祛肝火」(肝の機能亢進を除去)、「活血化痹」(血を活発化し滞りを変化させ除去)する。さらに哈蟆油カプセル剤と破壁霊芝胞子カプセル剤などのサプリメントで免疫力を増強させ、「固本駆邪」(本を固め病邪を駆除)する効果を強める。
経過:治療後、空咳、呼吸促迫、めまいが明らかに改善し、たまに咳や痰を伴う咳はあるが、胸内苦悶と呼吸困難はない。精神状態は比較的よく、食事もでき、安眠し、排尿排便も順調。退院前の検査では、バイタルサイン正常、意識ははっきりしている。聴診すると、両肺の病理性の呼吸音は明らかに改善、左肺では乾湿性ラ音は聴かれないがたまに胸膜の摩擦音(捻髪音)が認められ、右肺では中下葉に少量の湿性ラ音が聴こえ、心臓は心拍正常で心雑音は聴かれない。病状が明らかに好転したので退院。
しかし退院2週間後、患者は「この2日ほど咳が増加した感じで、白い痰に泡沫があり、粘って喀痰しにくい」ので再度入院し、3か月間治療した。
年2月に電話で患者に確認すると、病状は基本的に安定しているが、体が弱く寒さなどで悪化するのを避けるため、たいてい家で安静にしているとのこと。
三、一指禅功点穴療法による治療例
患者:女性、年生まれ。
既往歴:年6月脳腫瘍手術、04年10月と05年3月に2回てんかん発作、05年膝関節痛の検査で関節液の過剰滞留。以前、子宮がんにより子宮切除術、胆石による胆嚢切除術を受けている。看護師をしている娘は、患者が脳腫瘍手術の後遺症により、てんかん痙攣発作、精神的に落ち込み表情も乏しく、記憶力の低下などになり、さらに膝関節液の滞留で疼痛を起こし、現代医療の不足を痛感し、かつ毎日大量の化学薬品の服用で肝臓と腎臓を傷めたので、根本治療ではないと感じ、転じて自然療法を探し求めた。
この患者の日本無為気功養生協会での治療は、年1月14日から現在まで4段階に分けることが出来る。
<第1段階>
年1月14日~6月23日。外気治療による膝?股関節?頸椎の機能改善を主とし、「宣肺化痰」(肺気を通じて去痰)を補助とした。
年1月14日:
患者はその娘に連れられて日本無為気功養生協会に来て、一指禅功点穴療法の治療(週3~4回)を受け、また気功の練習にも参加(週1回)。
主訴:膝関節痛、さらに咳と喀痰がある。
現症:膝関節痛、股関節の硬直、起座困難、頭頂部に時々疼痛、咳、痰は多いが喀出出来にくい、左肩背部痛、書写時に手の震え。食欲普通、睡眠時に咳、大便1日2回で残便感あり。
検査:頸部硬直、頸部右回転困難、胸椎に側弯?後弯、膝関節に腫脹と皮膚の冷えおよび圧痛感あり、股関節の伸展が不自由で痛みがあるため歩行できない。
中医学的所見:「気陰両虚」(体内の構造と機能が両方とも損耗)、「気血阻滞」(気と血が滞る)型。
治療原則:「整形正骨」(形を整え骨を正す)、「疏経活絡」(経絡を疏通し活性化)、「補益肝腎」(肝と腎を補益)。
治療:一指禅功点穴療法。
経過:2月4日膝関節痛が軽減し歩行できる。2月6日膝関節のサポーターを使用しなくともよくなる。2月15日肩と頸部の疼痛が基本的に消失。
<第2段階>
年7月12日~10年4月29日。この段階は、患者の間質性肺炎を主要な治療目標とし、その治療手段は一指禅功点穴療法である。
6月24日感冒のため神奈川県の相模病院を受診し入院。X線検査で右肺中葉に約10mmの結節、右肺下葉に陰影が発見された。診断の結果、右肺中葉の結節は良性腫瘍で「非結核性抗酸菌症」(無症状期)に関係し、右肺下葉の陰影は3年前の始まった「非特発性間質性肺炎(NSIP)」であった。同病院の主治医は、X線写真の肺の陰影状態からみて、患者は発熱および頻繁で激しい咳などの症状があるはずだが、なぜか現れていないと不思議に思ったという。しかしわれわれは、患者が受けた一指禅功点穴療法の効果だと考える。前段階(第1段階)では間質性肺炎に対して明確な外気治療を行わなかったが、患者には咳?喀痰の症状がありので、膝?股関節と頸椎の機能の改善と同時に「宣肺化痰」(既出)を補助としていた。患者は外気治療を受け、自身の「気化機能」(内臓器官の機能)を強め、間質性肺炎の症状を寛解?抑制させたのである。同病院の治療はただステロイド類の薬物治療だけなので、患者は治療を受けずに7月11日退院し、継続して気功治療と気功の練習を受けた。
年11月12日:
主訴:咳、喀痰、痰が粘って排出しにくい。
現症:咳、痰が多いが吐き出しにくく、睡眠時にも咳がある。腰背部と膝関節の疼痛。書写時の手の震えは消失。食欲は普通、大便1日2回で残便感は消失。
中医学的所見:「肺腎陰虚」(肺と腎の陰虚)、「土不生金」(脾が肺を補益しない)。
治療原則:「清熱潤肺」(解熱し肺を滋養)、「培土生金」(脾を正常化し肺気を補益)、「活血通絡止痛」(血を活発化し止痛)。
治療:一指禅功点穴療法(注3一指禅功と一指禅功点穴療法に関しては、中国医学百科全書編委会『中国医学百科全書』(上海科学技術出版社、年、p-)の「一指禅功」の項参照)。
治療内容:
①背部:「圧脊法」で胸腰尾椎を調整。「点穴」で命門?風門?肺兪穴に気を注ぎ、腎と肺の気を補益。
②下肢:食指を「捏按」しながら安土穴(本家穴)を点穴し、、火を以て土をし、脾の運搬消化作用を促進。足三里と解谿穴を「点按」し、胃の気を清降)。衝上穴(本家穴)を「懸点」し、肝の気を昇降。
③上肢:内関と外関穴を「透点」し、「相火」(肝腎の陰虚による病変)の昇降を調節、ならびに全身の陰陽の脈の気の流通を促進。
④胸腹:神闕穴を懸点中気を補益。食指を「捏按」しながら期門穴を点穴し、肝の鬱滞を疎通し解消。膻中穴を点按し、宗気(食物から生じた気と呼吸の気とが合したもの)を潤して円満に補益し、かねて去痰。雲門穴?中府穴から?少商穴まで点穴及び「循経疎導」を以て肺の気を通し降ろす。
⑤頭顔部:地倉?迎香?四白?睛明?攅竹?角孫?率谷?脳空?風池?風府などの諸穴に「点按」し胃?胆?膀胱?大腸?小腸など各経絡の気を調整。
⑥頸部:「扳頸」および左右按圧法を以て頸椎を調整して、頸部の気血の循環を促進。
⑦頭頂部:百会穴を「懸点」し全身の経脈の気を統率して、脳の血液循環の改善、中枢神経の調節をし、施術諸法の総括をする。
経過:この段階で、咳?喀痰症状の悪化はない。06年6月に開始された相模病院での6か月に1回の胸部X線検査で、「非結核性抗酸菌症の悪化」と診断された。医師は入院治療を勧めたが、患者は拒否。その後、なお継続して一指禅功点穴療法を受けた。咳?微熱?倦怠?寝汗などの症状は、次第に軽減した。しかし、患者の年齢と長期間の病気のため、体力は低下した。
<第3段階>
年4月30日~年7月上旬。この段階は、なお患者の間質性肺炎を主要な治療目標とする。ただし、一指禅功点穴療法の基礎の上に、中薬と食事療法とを併用した。
年4月30日:
主訴:咳は以前に比べ悪化、痰が多く吐き出しにくい、飲食物を呑み込む時にむせやすい。
現症:咳、痰多く排出しにくい、痰は黄色で時に黒い塊が混じるが、気功治療後には吐き出しやすくなる。咳の後、呼吸が平静になるまでの間、吸気が困難。飲食物を呑み込む時にむせやすい。口が渇き熱い茶を飲むのを好む。食欲と排泄は正常。血圧/80mmHg。
検査:意識正常。舌質は赤く舌体は痩せ、舌面は水分滑らかで苔はない。脈は沈細数(沈んでいて細く速い)で、右の寸の脈診部位がとても弱く、左右の尺の脈診部位は脈が無いかのようであった。左右の頬は化粧をしているようで、口唇は赤紫色。
中医学的所見:「肺陰虧損」(肺を滋潤する液体が不足)、「肺金失斂」(肺が液体を収斂できない)、「土不生金」(既出)。
治療原則:「補中気」(脾胃の機能を補益)し「培土生金」(既出)、「潤降胆経相火」(胆経の熱を潤し降下させ)し、「清降肺熱」(肺の熱を清めて降下させ)。気功治療と中薬?食事療法で、陰陽ともに治療を始めて、「双管斉下」(両方から同時に同じ物事を進めること)をする。
治療内容
1、一指禅功点穴療法:前の治療原則と手法の基礎の上に、「中気」(脾胃の気)を巡らせて、「木」(肝胆)の気と「金」(肺大腸)の気を昇降させ、肺に収斂作用をつけることをする。
2、中薬:「中土」(脾胃)を補益し胆の気を降下させ肺の機能を円満にして、肺の熱を取り潤し去痰する。
准山(山薬)30g 葛根15g 薤白9g 苦杏仁9g
天花粉12g 生地黄4.5g 当帰3g 百合9g 瓜蔞仁9g
大豆?黒豆?緑豆各10g 麦芽糖適量
3、補助食品:肉末三豆飲(ひき肉と大豆?黒豆?緑豆の煮込みスープ)と山芋、黒キクラゲを日常服用し、脾胃の気を補益して肺を保護する、体液を養い、胆の気を降下させ肺に収斂作用をつける。
経過:以上の治療を実施して1か月から、患者の症状は気功治療だけの時に比べ大きく改善した。
5月9日:中薬服用を開始。
5月11日:排便状況改善、睡眠時の咳が減少し寝汗が消失。
5月19日:上記の改善以外に、さらに手足が温かくなり、口渇が軽減。
6月11日:塩袋を使用して腰背部痛を寛解させ、また温めて胸背部に当てさせた。
6月14日:塩袋の使用後、とても快適だと言う。
年6月16日:
主訴:咳?喀痰、痰は黄色あるいは淡い褐色で粘り、起床時には時に塊状の痰となる。
現症:咳の回数は減少、睡眠時の咳は基本的に消失。寝汗は無く、排便は1日2回で量多く形を成している。手足は温かい。口渇は軽減、飲食を呑み込む時のつかえも改善。
検査:意識正常、喜びの表情で、手掌は温かく、指腹は豊満。
聴診では両肺の呼吸音は基本的に正常、右肺中下葉に少量(吸気後期)の微細な湿性ラ音が聴き取れた。
舌体は痩せて赤く、中後部に微黄の薄い苔がある。
脈は緩で比較的有力、右脈は左脈に比べやや弱く、寸の部位の脈は関?尺の部位に比べやや弱い。
所見:4月30日と6月16日の診察結果に比べると、気功治療に中薬と生じ両方を併用した効果は、ただ気功治療のみより良いことがわかる。
付表:(巻末にあり)
この期間、患者の肺部症状は徐々に軽減し、食欲もある程度増えてきた。この期間中、尿路感染や微熱などの症状があったが、大きな病変にならなくて、数日で収まった。
<第4段階>
年中旬から今まで。患者は僅かな軽微な咳?喀痰があるので、中医薬の「中病即止」(病気に的中すれば、即し薬を止める)という投薬原則に従って、中薬の服用を停止し、気功点穴療法の施しと食事療法と栄養補充を続いてきた。患者の家族によると、今年の2月以来、患者は僅かな軽く咳と少量な喀痰があり、食欲?睡眠?二便ともに良好で、体重も増えてきた。
四、考察:生命の円運動を守る
以上の治療例を通して、以下の幾つかの考察をまとめることができる。
1、上述の2症例のうち1例は中薬を主とし西洋薬を補助とした治療で、もう1例は先ず気功治療だけを用い後に患者本人の練功?中薬?食事療法?頸椎への温罨法(塩袋)などの補助的リハビリテーション手段を併用したものである。中薬でも気功外気治療でも、いずれも有効性を確認できた。
ただし両者にはおのおの特色があり、長短もある。確かに『素問』陰陽応象大論篇第五で「味は形に帰し、形は気に帰し、気は精(飲食物中の精微)に帰し、精は化(生成変化)に帰す」と述べられているように、中薬(飲食物を含む)の「味」、生物の形質と組織の「形」、および生命体中の最も活力的な機能の「気」なるものは、互いに生成変化し互いの基礎になっている。しかし、結局中薬?食物は陰性に属する有形の物で、人体の形質の不足を補うことは出来るが、人体生命の真気の補充に対してはそんなに直接的ではなく、形体の調整や頸椎症などの退行性病理変化の面では限界性がとりわけ大きい。
これに対して気功外気は陽に属し、直接有効的に患者の体内の真気を調え動かし、その大脳機能を改善できる。一指禅功の豊富な正骨整形手法を併用して頸椎を調整し、「形(=構造)正しく、気(=機能)順[したが]い、意(=情報)寧[やす]し」の3方面の調和統一を達成できる。しかし、外気はまさに無形の陽性機能に属するので、患者の真気を調え動かした後に、もしもな中薬や飲食物など後天的な有形の物を通して、時々その不足している形質と枯渇している陰液(体内の栄養を有する液体)補充できれば、まさに「事半功倍」(半分の労力で倍の成果を挙げる)が手に入る。
2、用薬上では上述2例の考え方は、明らかに異なっており、前者(中薬治療例)は「宣肺化痰」(肺気を通じて去痰)と「活血通痹」(血を活発化し滞りを通じる)を主とし、肺内の邪を駆除しようとしている。これも近代中医学の一般的な思考で、感冒にかかったら、それは風寒の邪が人体に進入して病となったもので、昇散(上昇と消散作用)の薬を用いて風寒を駆除する必要がある。しかし『黄帝内経』の本旨、『傷寒論』の本意は、「人体の本である気が自ら病む」である。すなわち、人体に病を生じるのは、決して外邪が人体に進入したためではなく、人体自身の気が外部環境の影響で円満に活動できず自ら病むのである。『素問』陰陽応象大論篇第五は「治病は必ず本に求める」と指し示しており、陰陽に基づく。人体自身の円運動が、すなわち陰陽である。中医の治病の目的は、人体自身の気の偏りを矯正し、その旋転?昇降?融合の円運動を達成させなければならない。
後者(気功外気治療例)では、脾胃の補益を重視し、肺の粛降(静かに下降)と収斂機能を促進し、人体自身の円運動の回復を通して、体を健やかにし病を駆除する効果を図るという治療方針も、まさにこの認識に基づいている。まことに『素問』六微旨大論篇第六十八が「気の昇降は、天地の更用(相互に作用すること)なり……昇降相い因[よ]り(互いに因となり果となりあうこと)、しこうして変(変化)作[お]こるなり」と云うごとくである。むろん気あるいは薬あるいは自己錬功を用いても、むろん間質性肺炎に対しでもあるいはその他の難病やよくある病気に対しても、われわれが修復し守るべきものは、まさに現代の彭子益が明確に提出した、この種の昇降が互いに因となり果となり生々して止まない円運動である(注4詳しくは彭子益『円運動的古中医学』(中国中医薬出版社、年)を参照)。
3、本疾患の認識に対して、現代中医は一般に、伝統医学の「肺痿」あるいは「肺痹」に属し、病理変化の発生部位は肺で、肝?脾?腎の臓腑機能の失調に関係しており、その病理機序は主に肝腎両虚、瘀?痰?熱などの病邪の結合で、治療原則は肺腎の補益、痰の除去、しこりの消散なので、「活血通絡」(血行促進)、「軟堅散結」(堅いしこりを軟らげ消散)、「化痰清熱」(去痰し解熱)などの方法で治療する。これによって疾患の進行を遅くし、臨床症状を寛解して、患者の精神的ストレスを軽減させ、それにより生活の質(QOL)を向上させる、と考えている。
ただし筆者は、気功外気治療例の患者に対して、病の場所は肺にあっても、その発病過程と症状?舌脈からみて、中医学の「虚労」に属すると弁証した。虚労の病は、その初めはみな木気(肝の気)の妄動により、その後みな金気(肺の気)が収斂しなくなる。肺は五行説では金に属し、肺金の気は収斂?清涼?下降を常としている。これができれば肺気は病まない。この原理も前述の現代医学の観察―すなわち間質性肺炎の特徴である肺組織の肥厚が肺の膨張と収縮を妨害し肺活量を低下させ、酸素と二酸化炭素の交換、特に酸素の拡散(吸入と下降)に影響する―に符合している。この疾患の治癒は、主に肺金の気の収斂ができるかどうかにある。
この患者は肺金が収斂作用を失い、そのため長期の罹病期間中に化学薬品の治療を受け、腎水(腎が蔵する液体)が不足し、肝木が養えなく、脾が運行しなくなっていた。この腎と肝の病理変化で、肝の気が上昇して肺の気を下降させず、脾の病理変化で脾胃の気の運転が無力化し、肺の気を生じなくなった。肝の気の上昇と肺の気の下降不能から、相火(肝腎の熱)が下降せず上部に浮遊して肺を焼き、さらに肺の気を下降できずにしてしまった。それゆえ、治療中に脾胃の気を補益し脾胃を養い肺の気を生じさせ、胆経の熱を潤し下降させて肺の熱を下降させ、肺の気自身の昇降促進を主として、肺を潤し去痰した。そして肺の円運動と全体機能の円運動の回復を求めた。本例治療の現状からみて、治療効果は悪くない。当然、間質性肺炎は難病の一種なので、現代生理学の角度からみて、すでに線維化した肺組織はもとの正常な肺組織に戻ることはできないし、患者は70歳を過ぎており、自身の体の機能も日に日に衰弱しているにも関わらず、正確な治療法をして、時間をかければ、その症状を基本的に除去し、比較的健康な体を取り戻せる希望があると思っていた。本例の現状からみると、この効果がすでに現してきた。
但し、間質性肺炎がすべて「虚労」に属するか否かについては、筆者は経験不足なので、あえて妄言しなかった。ただし、中医学の治療は、西洋医学の病名を根拠にするものではなく、患者の証候?舌脈による弁証を根拠にしている。これらすべては、今後継続して検討すべき課題である。
中医の各種治療体系はそれぞれの長所があるが、共に気化原理に基づいているので、気功治療は他の治療法より、もっとも直接な治療効果がある。臨床実践において、このような長期わたって治療する症例のほかに、数十年の痼疾に手を与えると治っていた症例も少なくない。
以上、医学理論?治療原則?処方?手法に限定して検討した。気功治療中においてその重要な点は、「用意」(意識を用いる)と「行気」(気を行[めぐ]らせる)の問題であるが、現行の学術の規範に照らして記述するのは難しい。
付表
4月30日
6月16日
表情
正常、倦怠
正常、喜びの表情、掌温か、指腹豊満
聴診音
未検査
両肺呼吸音基本正常、右肺中下葉に少量(吸気後期)の微細な湿性ラ音
舌苔
舌体痩せて赤く、舌面光り滑らかで苔なし
舌体痩せて赤く、中後部に微黄の薄い苔あり、前部に薄い苔
脈象
沈細数、右寸甚だ弱い、両尺無いに似る
緩で比較的有力、右脈は左脈よりやや弱い、寸脈は関尺よりやや弱い
気功大講堂
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